オクターヴという選択-1
OCTAVE(以後、オクターヴ)の製品は今やすっかり日本にお馴染みとなり、上の画像を見て「あ、オクターヴだな」と気付かれる方も多いのではないでしょうか。人気の秘密は、やはり従来の管球アンプのイメージを覆す、その音にあると思います。ここでは、当店在庫の「V-70SE」で同社の魅力について御紹介したいと思います。
先ずは概要から。保護用のボンネットを外すと7本の真空管が見えます。後列の4本が出力管でそれぞれ2本で方チャンネル分を担っています。工場出荷時はSOVTEK(ロシア)の6550WEが付いて来ます。前列で頭だけ出ているのが前段の真空管で12AT7EH/electro-harmonix(ロシア)が2本と12AX7LPS/SOVTEKが1本です。これらの真空管でパワーアンプ部を構成しており、プリ部は半導体によるハイブリッド方式のプリメインとなっておりますので、簡単に言えば、半導体型プリアンプと管球型パワーアンプの「いいとこ取り」の構成です。フロントパネル左側のツマミがファンクションスイッチで入力セレクターと後で述べるバイアス調整用のスイッチを兼ねています。右側は音量調整用ボリューム。中央の窓は通常は現在選ばれている入力の表示という、いたってシンプルで永く使って飽きの来ないデザインだと思います。
リアパネルです。他社の一般的なアンプに見られない箇所が二つ。一つは左上にあるEcomodeというスイッチで、一定時間の無信号状態でパワーアンプの電源を落として真空管の寿命を延ばし、消費電力を減らす機能です。通常はオフ、バイアス調整を行う時もオフです。もう一つは電源差し込み口左側の丸いソケットで、ここにオプションの「Black Box」又は「Super Black box」を繋ぎます。フォノ入力はフォノモデルを選択した場合にのみ有効でラインモデル選択時にはAUX2となります。バランス入力が1系統。パワーアンプイン端子を装備してあり、この端子を使用した場合は完全な管球式ステレオパワーアンプとして機能します。
次に、この製品のセットアップを御紹介します。こちらに限らずオクターヴの製品は、出力管を色々と差し替えて使う事ができます。その際、面倒なバイアス調整が簡単にできる点がメリットの一つでもあります。「V-70SE」に付属の出力管はSOVTEKの6550WEです。5本入っており、1本はスペアです。一般的なプッシュプル方式のアンプでは真空管1本が破損した場合、マッチドペアで交換しなければならない事が多いですが、オクターヴの場合は、その必要がありません。では、これらを本体に挿して初期設定を行います。
中央パネルの画像ですが、下に4個の丸い穴の奥にマイナスネジのような物が見えるでしょうか。これはポテンションメーター(何回も回転するボリュームと考えて下さい)となっており最小にしておきます。4箇所とも付属のマイナスドライバーで反時計回りに回してカチッと音がするまで回しておきます。この構造は全ての同社製プリメインに共通です。
本体左側面の電源スイッチを入れてファンクションスイッチをバイアス調整モード(一番右に回してから左へ一つの位置)にして、しばらくすると、このような状態になります。真空管もヒーターが点灯します。この時点でもしも点灯しない真空管があれば、その出力管は破損している可能性があります。4個のLEDインジケーターは、そのまま本体の出力管を意味します。球が暖まるまで10分程度待ちます。
球が十分温まったらポテンションメーターをドライバーでゆっくり時計回りに回して行きます。上は1番管です。回して行くとグリーンのインジケーターが点灯して来ます。このあたりは、ほんの少しです。
さらに回して行くとグリーンだけの点灯となります。これも、ほんの少し。
さらに回して行くと赤のインジケーターが点灯して来ます。6550WEの場合のバイアスは、このグリーンとレッドの両方点灯でOKですので、これで1番管のバイアス調整終了です。
同様に2番管から4番管まで調整して行きます。
バイアス調整終了。あとはファンクションスイッチを左に回すとインジケーターが消えて入力インジケーターが点灯します。お好きな音楽をお楽しみ下さい。バイアス調整は出力管交換時のみでOKですので、頻繁に調整する必要はありません。また、この時点で調整できない球があった場合は出力管不良の可能性大です。交換の際には、該当する箇所のバイアス調整のみでOKです。1本1本を独立して調整できるメリットと言えます。尚、グリーンと赤の両方点灯で使用できる球は代表的な例としては、他にKT88があります。EL34や6L6といった低バイアスの球の場合はオレンジ(黄色?)とグリーンの両方点灯となります。
さて、次に御紹介したいのが、オプションの「Black Box」です。電源部を強化するコンデンサーらしいですが効果絶大です。上位機種の「Super Black Box」も含めて同社の全てのパワーアンプとプリメインに使用できます。
このように、ワンタッチで接続できます。必ず電源を切った状態で、しばらく放置(1分位)してから接続して下さい。
撮影のために横並びに配置しましたが、離して設置した方が見た目は良いかもしれません。Black Boxを追加すると低域のパワー感と解像度が高まります。「V-70SE」単体でも大変立派な音なのですが、一度、この音を聴いてしまうと、後戻りできなくなってしまい「なんで最初から付けないんだ!」と言われそうです。実際、私もそう思った一人です。因にSuper Black Boxにすると、低域が更に強力になるだけでなく高域の解像度と抜けが格段に良くなります。最後までお読みいただき、有難うございました。第二部以降は、このBlack Boxを接続した状態で、お話を進めさせていただきます。

その2(出力管を差し替えてみる)

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