JBL S3100のメンテ
2017年9月にJBLのS3100というフロア型スピーカーがUSEDで入庫しました。ウーファーを修理に出している間に内部のメンテを行った内容を御紹介します。
ホーン部も外して箱だけの状態です。内部にネットワークが見えます。
ネットワーク基板からはハンダ付けでダイレクトにケーブルが出ています。
スピーカー端子の内部側です。見えにくいですが、ファストン端子でネットワークに接続されています。この端子を一旦はずして接点をクリーニングします。
表側の端子も接点のクリーニングを行います。ボックス本体のメンテはこれで完了です。
外したホーンとドライバーです。固定用のネジが結構あるのですが、一部、かなり緩んでいました。増締めを行います。
ドライバー内部。ケーブルを外して全ての接点をクリーニングします。
ドライバーの入力端子側も全て外してクリーニングします。特にターミナルを固定しているビスは信号が流れる重要なパーツなので念入りに行います。
2017年10月にウーファーが戻って来ました。何とエッジ交換ではなく、コーン紙全体の交換となりました。何故?
これが修理に出す前のウーファー(ME150H)です。一部、エッジがつぶれている部分がありますが、目視ではさほど大きなダメージは無いように見えます。センターキャップが退色しているのは、よくありますね。
当方はスピーカーユニットの修理を山形県のオーディオラボさんにお願いしています。上の画像はコーン紙を外した状態のウーファーの磁気回路の一部を送ってもらった画像です。分かりづらいですが、白っぽいつぶつぶが酸化(サビ)している状態です。この酸化した箇所を奇麗に取り除かないとボイスコイルのボビンがタッチして異常音を発生させたり、最悪の場合はボイスコイルを破損するのだそうです。さて、磁気回路のクリーニングにはコーン紙を外さなければなりません。御承知の通り、コーン紙は手前のエッジ部と奥のダンパー部で支えられています。従来のユニットでは、奥のダンパーはシンナー等で接着剤を溶かして外せたのですが、ME150Hはアクリル接着剤で固定されているため、外す手段がありません。従ってME150Hの磁気回路のオーバーホール(クリーニング及び酸化防止処理)にあたっては、外したコーン紙は廃棄するしか無く、新しいコーン紙と交換となるのだそうです。しかもほぼ100パーセントの確率で、このユニットは磁気回路の酸化が進んでいるとの事でした。
もう一つの理由はエッジ部にあります。上の画像は交換したME150Hのエッジです。触ってみると、かなり硬い感じです。これはエッジ及びコーン紙の表面にアクアプラスという素材を吹き付けて加工した特殊な物です。ME150H本来の音を出すにはコーン紙交換以外に方法は無いという事、御理解いただけましたでしょうか。オーディオラボさんの修理報告を読むと、磁気回路は「オーバーホール」となっています。という事は磁気回路の酸化防止処理もなされているので、もしも将来的にアクアプラス処理のエッジが入手できれば、次回の修理は磁気回路のメンテは不要ですので、エッジ交換だけで済む事になります。
各ユニットを取付け完成したJBL/S3100です。音出しすると最初に入庫した時の音とは全く違う事に驚きます。メンテ前の音は低域はフワフワでもやもやした感じ、中高域はくすんだ感じの音でしたが、メンテ後はJBLらしいスカッとした音に戻りました。やはりウーファーのコーン紙交換と磁気回路のオーバーホールが効いているようです。ただ、残念ながらME150Hの純正コーン紙は2017年10月現在、既に残り僅かで再生産の予定は不明との事です。このユニットをお持ちの方は、急いだ方が良いかと思います。因にこのウーファーはS3100の他、S3100mk2、4344mk2に搭載されています。

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