カウンターポイント/SA-5000の真空管交換
1990年に発売され、音質の良さで長くベストバイに選出されたカウンターポイントのコントロールアンプのSA-5000。2018年春にユーザー様の御依頼で中の真空管を交換してみたところ、好結果が出ましたので御紹介致します。
アンプ内部の様子です。「A」の部分がフォノイコライザー部。「B」の部分はラインアンプ部。「C」の部分が電源部となります。基板の約半分をフォノイコに使用しています。半導体と真空管のハイブリッド回路構成となっており、基板は振動対策のため、フロートされています。
真空管の構成はフォノイコ部、ラインアンプ部、電源部共に6DJ8をそれぞれ2本づつ、合計6本、電源部の1本のみ12AX7が使用されています。このアンプを使用される方はほとんどレコード再生に重点を置いているはずですので、V1、V2に良い球を奢り、次に良い球をV3、V4に使用する事にしました。
フォノ部にテレフンケン/ECC88を使用しました。ECC88は6DJ8のヨーロッパ表記で同じ物です。この球はてっぺんの部分(Tip)に色がついており、フォノグレードを表しています。1960年代の貴重なNOS(New Old Stock)球です。
テレフンケンの証、底部のダイヤマークです。この球には2、7、7の数字が見えます。
ラインアンプ部にはテスラ(当時のチェコスロバキア)のE88CCを使用しました。現在のJJテスラではありません。有名な剣のマーク(Crossed Swords)が見えます。E88CCはECC88の高信頼管ですので6DJ8と互換があります。
そして、電源部にはフィリップスECGの6922を使用しました。6922はアメリカでの6DJ8の軍用管(JAN規格)です。価格的には使用した6DJ8系の球のなかでは最もリーズナブルでした。
最後に電源部に使用されていた12AX7ですが、ここが意外と音質に影響大でした。当初、電源部は何でもいいだろうと思って松下とか現行管を使ってみたのですが、変化が大きいので、思い切ってシーメンスのECC83を奢りました。ECC83は12AX7のヨーロッパ表記です。
試聴の様子。実際には天板を外した状態で何度も何日も沢山の球を交換しては試聴の繰り返しの結果が上記のような内容となりました。交換前の音は、解像度が低く、SN比が悪く、レンジも狭いごくごく普通の古いアンプの音でした。しかし、ある時、電源部の12AX7を交換してから、球を交換した際の変化がはっきり出るようになって驚きました。最終的に落ち着いた上記内容での音質は音楽性では現在でも十分通用するものと思います。真空管を変えて音が変化するのは、基本設計が優れている証拠だと思います。当時のマイケル・エリオットの設計は間違っていなかったという訳です。そこで、改めてSA-5000について調べてみると、ステレオサウンドNo.97(1991、Winter)で長島達夫氏が詳しく書かれており、「真の意味でのハイブリッドアンプ」と表現されていました。元々百万円のアンプですが、良質の真空管で更にグレードアップできるなんて素晴らしい事だと思います。尚、真空管選びは自己責任ですので悪しからず。